Debian GNU/Linuxに特化したmilter managerのインストール方法について説明します。Debianに依存しない一般的なインストール情報はインストールを見てください。
milter managerのサイトで現在の安定版stretchと開発版buster用のパッケージを配布しています。
まず、以下の内容の/etc/apt/sources.list.d/milter-manager.listを作成します。
% curl -s https://packagecloud.io/install/repositories/milter-manager/repos/script.deb.sh | sudo bash
参考: https://packagecloud.io/milter-manager/repos/install
NOTE: packagecloud はsidをサポートしていません。
/etc/apt/sources.list.d/milter-manager.list:
deb http://downloads.sourceforge.net/project/milter-manager/debian/stable unstable main deb-src http://downloads.sourceforge.net/project/milter-manager/debian/stable unstable main
milter managerをインストールします。
% sudo aptitude update % sudo aptitude -V -D -y install milter-manager
MTAはPostfixを利用することとします。
% sudo aptitude -V -D -y install postfix
milterはspamass-milter、clamav-milter、milter-greylistを使用することとします。
% sudo aptitude -V -D -y install spamass-milter clamav-milter milter-greylist
milterの基本的な設定方針は以下の通りです。
UNIXドメインソケットで接続を受け付けるようにします。これは、セキュリティ面と速度面の理由からです。
UNIXドメインソケットはpostfixグループでの読み書き権限を設定します。これは、既存のmilterパッケージの設定をできるだけ利用するためです。
必要のない配送遅延をできるだけ抑えるため、milter-greylistはS25Rにマッチするときのみ適用します。しかし、これはmilter-managerが自動で行うため、特に設定する必要はありません。
まず、spamdの設定をします。
/etc/spamassassin/local.cfに以下の内容を追加します。これで、スパム判定された場合のみ、その詳細をヘッダに追加するようになります。
report_safe 0 remove_header ham Status remove_header ham Level
spamdを有効にするため、/etc/default/spamassassinを以下のように変更します。
変更前:
ENABLED=0
変更後:
ENABLED=1
spamdを起動します。
% sudo /etc/init.d/spamassassin start
spamass-milterはデフォルトの設定で問題ありません。
clamav-milterはデフォルトの設定で問題ありません。
/etc/milter-greylist/greylist.confを編集し、以下のような設定にします。
# note Greylistの悪影響を抑えるために制限を緩めているため、迷惑 メールが通過する確率がやや高くなりますが、誤判定時の悪影響を 抑える方を重視するべきです。Greylistですべての迷惑メールをブ ロックしようとするのではなく、Greylistで検出できない迷惑メー ルはSpamAssassinなど他の手法で対応します。milter managerはそ のように複数のmilterを組み合わせた迷惑メール対策システムの構 築を支援します。
変更前:
racl whitelist default
変更後:
subnetmatch /24 greylist 10m autowhite 1w racl greylist default
次に、/etc/default/milter-greylistを変更し、milter-greylistを有効にします。milter-greylistの起動ファイルではソケットファイルをpostfixグループで作成できないため、IPv4で接続することとします。ただし、ローカルホストからの接続のみを受け付けることにします。
変更前:
ENABLED=0
変更後:
ENABLED=1 SOCKET="inet:11125@[127.0.0.1]"
milter-greylistを起動します。
% sudo /etc/init.d/milter-greylist start
milter-managerはシステムにインストールされているmilterを検出します。以下のコマンドでspamass-milter、clamav-milter、milter-greylistを検出していることを確認してください。
% sudo /usr/sbin/milter-manager -u milter-manager --show-config
以下のように表示されていれば検出は成功しています。
... define_milter("milter-greylist") do |milter| milter.connection_spec = "inet:11125@[127.0.0.1]" ... milter.enabled = true ... end .. define_milter("clamav-milter") do |milter| milter.connection_spec = "unix:/var/run/clamav/clamav-milter.ctl" ... milter.enabled = true ... end .. define_milter("spamass-milter") do |milter| milter.connection_spec = "unix:/var/spool/postfix/spamass/spamass.sock" ... milter.enabled = true ... end ..
milterの名前、ソケットのパス、enabledがtrueになっていることを確認してください。異なっていた場合は、設定を参考に/etc/milter-manager/milter-manager.confを編集してください。ただ、できれば、設定を変更せずに使用できるようにしたいと考えています。もし、検出できなかった環境のことを教えてもらえれば、milter-manager.confを編集しなくとも使用できるように検出方法を改良することができるかもしれません。
Postfixと一緒に動作するように/etc/default/milter-managerを編集します。
変更前:
# For postfix, you might want these settings: # SOCKET_GROUP=postfix # CONNECTION_SPEC=unix:/var/spool/postfix/milter-manager/milter-manager.sock
変更後:
# For postfix, you might want these settings: SOCKET_GROUP=postfix CONNECTION_SPEC=unix:/var/spool/postfix/milter-manager/milter-manager.sock
ソケットを作成するディレクトリーを作成します。
% sudo mkdir -p /var/spool/postfix/milter-manager/
milter-managerユーザーをpostfixグループに所属させます。
% sudo adduser milter-manager postfix
milter-managerの設定が完了したので、起動します。
% sudo /etc/init.d/milter-manager restart
milter-test-serverで起動の確認をすることができます。
% sudo -u postfix milter-test-server -s unix:/var/spool/postfix/milter-manager/milter-manager.sock
このように表示されれば成功です。
status: accept elapsed-time: 0.128 seconds
起動に失敗しているときはこのように表示されます。
Failed to connect to unix:/var/spool/postfix/milter-manager/milter-manager.sock: No such file or directory
失敗している時はログを頼りに問題を解決します。–verboseオプションをつけると詳細なログが表示されます。また、デーモンプロセスにしないことにより、標準出力にもログが表示されます。
/etc/default/milter-managerに以下の内容を追加します。これにより、標準出力に詳細なログが表示されます。
OPTION_ARGS="--verbose --no-daemon"
milter-managerをもう一度起動します。
% sudo /etc/init.d/milter-manager restart
問題があればログが表示されます。起動しているmilter-managerはCtrl+cで終了することができます。
問題が解決した後は、/etc/default/milter-managerに追加したOPTION_ARGSをコメントアウトし、デーモンプロセスで起動するように戻してから、milter-managerを起動しなおしてください。
まず、milterの設定をします。
/etc/postfix/main.cfに以下を追加します。
milter_protocol = 6 milter_default_action = accept milter_mail_macros = {auth_author} {auth_type} {auth_authen}
それぞれ以下のような設定です。
続いて、Postfixにmilter-managerを登録します。spamass-milter、clamav-milter、milter-greylistはmilter-manager経由で利用するので、Postfixにはmilter-managerだけを登録すればよいことに注意してください。
/etc/postfix/main.cfに以下を追加します。Postfixは/var/spool/postfix/にchrootすることに注意してください。
smtpd_milters = unix:/milter-manager/milter-manager.sock
Postfixの設定を再読み込みします。
% sudo /etc/init.d/postfix reload
以上で設定は完了です。
milter-managerはいくつかsyslogにログを出力します。mail.infoに出力するので、正常に動作していればmilter-managerからのログが/var/log/mail.infoにログがでるはずです。テストメールを送信して確認してください。
milter-managerを導入することにより、milterとPostfixを連携させる手間が削減されています。
通常であれば、Postfixのsmtpd_miltersにspamass-milter、clamav-milter、miler-greylistのソケットを指定する必要があります。しかし、milter-managerを導入することにより、milter-managerのソケットのみを指定するだけですむようになりました。各milterのソケットはmilter-managerが検出するため、typoなどの小さいですが気づきにくいミスに惑わされることがなくなります。
また、ここでは触れませんでしたが、milter-managerは/etc/default/milter-greylist内にあるようなENABLEDの設定も検出します。そのため、milterを無効にしたい場合は、以下のような手順になります。
% sudo /etc/init.d/milter-greylist stop % sudo vim /etc/default/milter-greylist # ENABLED=1 => ENABLED=0
milterを無効にしたら、milter-managerの設定を再読み込みします。milter-managerはmilterが無効になったことを検出し、無効になったmilter とは接続しなくなります。
% sudo /etc/init.d/milter-manager reload
Postfixのmain.cfを変更する必要はありません。
Debian GNU/Linux上でmilterを複数使っている場合は、milter-managerを導入して、管理コストを削減することができます。
milter managerは運用を支援するツールも提供しています。インストールは必須ではありませんが、それらを導入することで運用コストを削減することができます。それらのツールもインストールする場合はDebianへインストール(任意)を参照してください。